休眠法人

 長期間にわたり事業活動をしていない、実態のない法人のことをいう。事業を廃止し、実体を失った法人がいつまでも登記上公示されたままとなるため、登記の信頼を失いかねないこと、休眠法人を売買するなどして、犯罪の温床とされかねないこと等の問題がある。税制上のメリットや目的外の事業に利用するために休眠法人の売買がしばしば社会問題とされる。公益法人・宗教法人にのみ認められる墓地経営を目的とした売買も少なくない。このようなことから、昭和54(1979)年には民法の一部改正が行われ、旧公益法人に対し、主務官庁は「正当ノ事由ナクシテ引続キ三年以上事業ヲ為サザル」法人を休眠法人として、その設立許可を取り消すことができることとした(旧民法71後段)。昭和60(1985)年には、「休眠法人の整理に関する統一的基準」および「休眠法人の整理に関するモデル要綱」が各府省による公益法人指導監督連絡会議の幹事会了解事項として策定され、公益法人の実態調査、休眠法人の認定、設立許可の取消しの手続き等を定めることにより、休眠法人の一層の整理促進を図ろうとした。その後、平成20(2008)年に施行された公益法人制度改革関連三法によって、旧公益法人は、5年間のうちに公益法人または一般社団・財団法人への移行申請を行わなければ、解散したものとみなされることとなった(整備法46)。また、旧民法71後段に代わって、一般社団・財団法人(以下、公益法人を含む。)においては、最後の登記から5年を経過している法人を休眠一般法人として、その旨が公告されて2か月のうちに「事業を廃止していない旨の届出」または役員変更等の登記をしない場合は、解散したものとみなされることとされた(一般法人法149、203)。ただし、みなし解散の登記後3年以内にかぎって、解散したものとみなされた一般社団・財団法人は、社員総会または評議員会の特別決議によって、法人を継続することができる。この場合は、2週間以内に継続の登記の申請をしなければならない。なお、農業協同組合および農事組合法人においても平成28(2016)年より一般社団・財団法人と同様に5年の休眠規定が置かれ、みなし解散の対象となった(農協法64の2)。
(桑波田直人)