給付・反対給付均等の原則

 保険は、共通のリスクのある人が多数集まって、リスクを分散する仕組みである。保険では、各個人にとっては偶発的な保険事故であっても、多数の人で何回もその保険事故が繰り返されていくと、ある一定の確率に近づく。これを「大数の法則」(Law of LargeNumbers)という。このように保険が成立して安定的に運営されるためには、その基礎に大数の法則が成立するだけの多数の人の参加が必要であることから、「大数の法則」は保険の基本原則である。また、保険は第1原則「給付・反対給付均等の法則」、第2原則「収支相等の法則」、第3原則「公正保険料の法則」の3大原則がある。第1原則を名付けたのは、ドイツの経済学者・統計学者Lexis, W.(レクシス)である。第1原則「給付・反対給付均等の法則」は「給付・反対給付均等の原則」、「レクシスの法則」と呼ばれている。レクシスは「給付・反対給付均等の原則」を保険料P、保険金Z、保険事故発生の確率wとして、P=wZの関係が成り立つことを示した。給付が保険料、反対給付が保険金を指すことから、保険契約者が支払う保険料Pが保険事故発生時に支払われる保険金の数学的期待値wZに等しいことを示す。すなわち、各保険契約者が支払うべき保険料は、その人について対象となる保険事故の発生率に応じ、かつ、保険給付額に応じるということである。保険料はその人のリスクに応じて負担するという点が重要である。つまり、リスクすなわち保険事故発生の確率が10倍の人は10倍の保険料が必要だということである。リスクの高い人は高い保険料を支払い、リスクの低い人は低い保険料を支払うことによって、保険原理が実現できる。この原則にかなうことが、保険契約における等価交換をあらわし、個人的公平性、保険数理上の公平性という。等価交換の契約に基づいて保険が成立する民間保険の保険料は、リスク見合いの保険料の原則に従った決め方をする。これが市場(自由契約)で保険を商品として売り買いする民間保険の原則である。社会保険では「給付・反対給付均等の原則」とは異なる保険料負担方法を採用している。
(吉田初恵)