基本財産

 公益法人などの非営利組織の目的(ミッション)である事業を行うために不可欠な財産であり、組織存続の基礎となるものである。非営利法人の制度上、基本財産にかかる規定は制度間で異なる。一般法人法上、一般財団法人は法人の目的である事業を行うために不可欠なものとして、定款で定めた基本財産がある場合には、定款の定めに従って、理事は維持義務を負い、事業を妨げることとなる処分には制限が課されている(一般法人法172Ⅱ)。基本財産を定めるか否かは法人の自由であり、基本財産を定める場合、基本財産の滅失により当該法人の目的である事業が不能になると、解散事由となる(一般法人法202Ⅰ③)。なお、法令上、一般社団法人に基本財産に関する規定はない。公益認定法5は、一般社団・財団法人が公益認定を受けるための基準を規定しており、その1つとして、公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産(不可欠特定財産)があるときは、その旨ならびにその維持および処分の制限について、必要な事項を定款で定めることを要請している(公益認定法5⑯)。不可欠特定財産は、法人の目的、事業と密接不可分な関係にあり、当該法人が保有、使用することに意義がある特定の財産を意味している。たとえば、一定の目的のもとに収集、展示され、再収集が困難な美術館の美術品が該当する。一般財団法人の基本財産が不可欠特定財産に該当する場合もあるが、金融資産や通常の土地・建物は、処分または他目的への利用の可能性があることから、基本財産が必ずしも不可欠特定財産に該当するわけではない(公益認定等ガイドラインⅠ-15)。
 基本財産は、公益法人会計基準上、貸借対照表の固定資産における基本財産の区分に表示される(公益法人会計基準注解・注4)。一般社団法人には基本財産に関する法令上の定めはないが、公益社団法人として不可欠特定財産がある場合には、貸借対照表上、基本財産として表示される(公益認定等ガイドラインⅠ-15)。社会福祉法人では、基本財産は法人の定款が基本財産と定めるものであり、法人存立の基盤となるものである。処分または担保に供する場合には、原則として所轄庁の承認を受けなければならない旨が定款に明記される必要がある(社会福祉法人審査基準第2、2⑴)。社会福祉施設を経営する法人は、すべての施設についてその施設の用に供する不動産は基本財産とすることが定められている。社会福祉協議会および共同募金会を除く社会福祉施設を経営しない法人は、原則として1億円以上の資産の基本財産としての保有が規定されている。社会福祉協議会および共同募金会は300万円以上に相当する資産の基本財産としての保有が定められている。基本財産は元本が確実に回収できる、固定資産としての常識的な運用益がえられ、または利用価値を生ずるなど、安全、確実な方法での管理運用が要請されており、株式などの価格変動の著しい財産、美術品などの客観的評価が困難な財産などでの管理運用は適当でないとされている(社会福祉法人審査基準第2、3⑴)。基本財産は社会福祉法人会計基準上、貸借対照表の固定資産における基本財産の区分に表示される。
(尾上選哉)