公益に奉仕する非営利組織も非営利の“貨幣” である信頼性が低下していくこのような過程は悪用と不正の発見に要する情報がそれ自体コスト高であるから遅く進行するものの、いずれは非営利組織の一種のGresham(グレシャム)の法則が働き、偽装した営利企業という悪貨がよい非営利組織を駆逐する結果となる。最後には信頼に基づくサービス供給という非営利市場は消滅する。そこで、このような偽装した営利企業の非営利組織への参入を厳しい許認可等の規制で阻む必要があるが、近時の規制緩和政策の流れから、むしろ準則主義で参入を認める傾向にあり、「偽装した営利企業」がさらに流入してくる可能性が高い。そのうえ、非営利組織への公的助成が大きくなり、非営利組織への各種の優遇措置を講じれば、それだけ営利企業が非営利組織形態を選択し、またそれに鞍替えして営利を追求することになる。そしてその結果、偽装した営利組織を規制し監視するコストがさらに大きくなるだけではなく、非営利組織を優遇する制度や政策そのものに対する疑念を高め、優遇措置の撤廃の圧力を強めることになる。
(堀田和宏)