議案提案権

 社員・評議員提案権のうち、社員・評議員が、社員総会・評議員会において、その会議の目的である事項について議案を提出することができる権利をいう(一般法人法44本文、185本文)。議案とは、議題に対する具体案でたとえば、「理事5名選任の件」という議題がある場合に、その議案である「Aを理事の候補者とする。」という案である。議案提案権は、社員・評議員の意思を一般社団・財団法人の運営に反映させることによって、理事・理事会による運営を牽制することにその意義を有する。なお、議案の提案は、社員総会・評議員会の当日に修正動議の形で提案される場合のほか、議案の要領の通知請求(一般法人法45、186)とともに、あらかじめなされる場合がある。当該議案が法令・定款に違反する場合には、社員・評議員は議案を提案することはできない(一般法人法44但書き、185但書き)。また、実質的に同一の議案につき、社員総会において総社員の議決権の10分の1(定款による引下げが可能)以上、評議員会において議決に加わることができる評議員の10分の1(定款による引下げが可能)以上の賛成をえられなかった日から3年を経過していない場合(一般法人法44但書き、185但書き)には、社員・評議員は当該議案を提出することはできない。これは、ほとんど可決の見込みのない提案を繰り返し提出することができないようにして、社員・評議員の議案提案権が濫用されることを防止するためである。社員・評議員の議案提案権は、あくまでも「社員総会・評議員会の目的である事項」について認められるので、議題となっていない事項について議案を提出することはできない(一般法人法44本文、185本文)。正当な拒絶理由がないのに、社員総会・評議員会における議案提案を拒絶した場合には、社員総会・評議員会の決議の方法が法令に違反する場合に該当し、社員総会・評議員会の決議取消事由となる(一般法人法266Ⅰ①)。
(渋谷幸夫)