監査

 ある事物が、一定の規準に従って作成されているか否かを、独立した第三者が収集した証拠に基づいて証明することをいう。監査は保証の一種であり、保証のなかでもその水準がもっとも高いものと理解されている。そのために、監査の手続きも一定の規準(監査の規準ないしは監査指針)に従って行われる。監査は、その対象となる事物を作成した当事者が、利害関係者に対してそれが規準に従って作成したものである旨の、説明責任の遂行のために必要となる。監査は、単純に事物を検証あるいは確認するといった場合であっても、一般的・日常的に用いられている用語であるため、ここでの定義に当てはまらない「監査」も存在する。文盲率が高かった時代には、監査はもっぱら会計担当者からの聴き取りによって行われ、これが監査(auditing:聴くこと)の語源となったとされる。会計監査は、監査のなかでも典型的なものであり、組織に対して法令によって強制される法定監査となっていることが多い。組織における会計監査は、都市や荘園の会計不正の有無を検証するために始まり、大規模営利企業が出現した産業革命期以降は、企業が作成した財務諸表の適正性についての意見表明を行う監査へと転換した。これは、企業が作成した財務諸表に基づいて投資する利害関係者への説明が必要となったことによる。一方で、損益計算を会計目的としない非営利組織では、会計監査の目的は財務諸表の適正性ではなく、財務諸表を含む会計記録や手続の合規性の証明が主であった。しかし、近年では非営利組織においても広く複式簿記が適用され、かつ組織の会計的支出の成果(アウトカム)の証明も会計監査の目的となるに至っている。このため、国および地方の政府組織では、経済性、効率性、有効性の観点からの監査(3E監査ないしはVFM監査)が導入され、また非営利法人においても、営利企業と同様の意見表明型の監査が広く行われるに至っている。
(吉見 宏)