価値財(メリット財)

 医療や教育などのサービスは排除性、競合性があり、私的財であることが多いが、その便益がサービスの受け手本人だけにとどまらず、社会全般や地域にも横溢するような場合、つまりその財が正の外部性をもつ場合、価値財あるいはメリット財と呼ばれる。たとえば教育サービスは、直接的にはその受け手に便益をもたらすが、教育を受けた者が増えることで犯罪が抑制されるなど社会の秩序が保たれたり、経済活動が活発化することが期待でき、社会にとっても便益がある。そのため、その財の供給の費用の一部あるいは全部が社会的に負担される。また、その供給の形態も、私的財でありながら政府や民間非営利組織によって供給されたり、民間事業者の供給に対して政府の補助がなされたりする。医療や教育の市場が、しばしば政府、企業、民間非営利組織などが混在する混合的市場となっているのも、それらのサービスが価値財としての性質をもつためである。
(吉田忠彦)