外部性

 ある経済主体の活動が、その活動とは直接的関係がない他の主体や社会の便益や費用などを発生させることである。その外部性が第三者である主体に便益をもたらす場合は、正の外部性あるいは正の外部経済と呼び、損害や費用をもたらす場合は、負の外部性あるいは負の外部経済と呼ぶ。正の外部経済が発生する財の場合には価値財(メリット財)と呼ぶこともある。たとえば、伝染する病気の予防接種は、予防接種を受けた本人に病気になりにくくなるという便益を与えるだけでなく、他人に病気を伝染させることがなくなるので、地域や社会全体にも便益を与える。一方、工業製品の生産活動によって空気や水などを汚染すると、そのダメージを回復させるために費用が必要になったり、近隣の住民の健康を損ね治療費などの費用を生み出すことがある。製品の生産には意図されなかったこれらの影響が負の外部性である。産業集積論においても、集積のメリットの1つとして外部経済の発生が指摘されている。また、ネットワーク論においても同様の効果が指摘されている。産業立地やネットワークへの参加者が増えるほど外部経済も高まり、それが地域やネットワークの優位性をもたらす。そのため、競争相手よりも早く産業集積を高めたり、ネットワークへの参加者を集めることを目指した戦略がとられることもある。
(吉田忠彦)