回転出資金(農業協同組合)

 定款に回転出資金設定の定めを置いたうえで総会決議をえることにより、利用分量分配金の全部または一部を5年にかぎり出資金として扱う農業協同組合(JA)に特有の制度である(旧農協法13の2Ⅱ)。会計上の取り扱いは資本とされている(旧農協法施行規則98Ⅱ③)。全国農業協同組合中央会が定める従来までのJA規範定款令では「組合員に配当される毎年度の剰余金に相当する額を超えない範囲で総会で定める金額」を5年にかぎり回転出資金とする旨の規定を定款に置くこととされていた。  回転出資金は、JAの資金不足を解消するための方策として昭和26(1951)年に導入され、損失の補塡等に使用することも可能であったが、次第に必要性が薄れ、平成27(2015)年の農協法改正(平成28[2016]年4月1日施行)では、回転出資金を規定していた旧農協法13の2が削除され、回転出資金は廃止された。なお、経過措置として改正時に存する回転出資金については、引き続き従前どおりの取り扱いとなる(同法附則5)ため、令和2(2020)年の事業年度までは残る可能性がある。会計上の取り扱いについては、回転出資金は、事業分量配当金の組合員への払込を5年間停止しているものであることから、未払配当金と同様に負債として認識すべきとの考えもあった。しかし、回転出資金は、もともと剰余金の一部であって、剰余金の払い出しを停止しているだけであること、また、欠損金の補塡も可能であることから、純資産の部で認識されるべきと考えられ、旧農協法施行規則においては、「純資産」と整理された。また、キャッシュ・フロー計算書上では、いったん事業分量配当金を支払ったものとして事業活動区分に記載し、回転出資金の受入収入として財務活動区分に記載される。
(白土英成)