(井上定子)
開設持分
持分とは、企業の資本提供者の不特定企業資産に対する請求権(財産権)のことをいう。剰余金が発生した場合、資本提供者は出資割合に応じた持分を有することとなる。しかしながら、病院の開設主体は、さまざまな成り立ちや特質をもつため、すべての開設主体が持分を有するわけではない。施設基準である病院会計準則(平成16年8 月19日医政発0819001号)では、純資産を資産と負債の差額として定義するのみで、特定の区分は示されていない。これは、医療施設では配当などの利益処分を予定していないことなどによる。これに対して、病院のおもな開設主体である医療法人は、出資概念や持分が存在する類型も存在するが、非営利で配当禁止であるという基本特徴をもつ。四病院団体協議会による医療法人会計基準(医療法人会計基準に関する検討報告書[平成26年3月19日医政発0319第7号]第2Ⅲ、注4)では、医療法人の類型に応じて、純資産の構成内容がつぎの3つに分けて規定されている。具体的には、①持分の定めのある社団医療法人の場合、出資金・積立金・評価換算差額等の3区分、②持分の定めのない社団医療法人で基金制度を有する法人の場合、基金・積立金・評価・換算差額等の3区分、そして③上記以外の医療法人の場合、積立金・評価換算差額等の2区分となる。また、平成28(2016)年4月20日に公布された医療法人会計基準(厚生労働省令第95号)8では、純資産の部を出資金、基金、積立金および評価・換算差額等に区分することが定められている。そして、出資金には、持分の定めのある医療法人に社員その他の出資者が出資した金額を、基金には、医療法施行規則30の37の規定に基づく基金の金額を計上することが規定されている(厚生労働省令第95条13、14)。なお、この規定は四病院団体協議会による医療法人会計基準と基本的に同内容である。