介護保険制度

 高齢化の進展に伴い要介護高齢者の増加、介護期間の長期化等による介護ニーズの増大、核家族化の進行、介護する家族の高齢化等要介護高齢者を支えてきた家族の状況変化により従来の老人福祉・老人医療制度の対応では限界となったため、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みを創設し、平成9(1997)年介護保険法成立、平成12(2000)年介護保険法施行となった。介護保険制度(第1章総則 第1条)は、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護および療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービスおよび福祉サービスにかかる給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上および福祉の増進を図ることを目的とする。」として創設された。また、第7条において「要介護状態」とは、身体または精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部または一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分のいずれかに該当するものとして定義された。制度には3つの基本方針を定めている。①自立支援:高齢者の介護のみならず自立支援を理念とする。②利用者本位:利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度とする。③社会保険方式:給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用する。被保険者は、①65歳以上の者(第1号被保険者)、②40〜64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)と示され、介護保険サービスは、65歳以上の者は原因を問わず要支援・要介護状態となった場合、40〜64歳の者は末期がんや関節リウマチ等、老化による病因で要支援(日常生活に支援が必要な状態)・要介護状態(寝たきり、認知症等で介護が必要な状態)になる特定疾病(16種類)にかぎり受給要件としている。保険料負担は、第1号被保険者は市町村が徴収(原則年金から天引き)、第2号被保険者は医療保険者が医療保険の保険料と一括徴収する。要介護認定制度(要支援認定を含む)の仕組みは、介護の必要量を全国一律の基準に基づき、客観的に判定する仕組みで、1次判定および2次判定の結果により市町村が申請者について要支援・要介護認定を行う。①1次判定:市町村の認定調査員による心身の状況調査74項目(認定調査)および主治医意見書に基づくコンピュータ判定を行う。②2次判定:保健・医療・福祉の学識経験者により構成される介護認定審査会のもと、1次判定結果と主治医意見書等に基づき審査判定が行われ7区分(要支援1・2度、要介護1〜5度)が決定する。介護サービスの種類は、都道府県・政令市・中核市が指定・監督をする介護給付対象の①居宅介護サービス(訪問、通所、短期入所)と、②施設サービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院等)があり、市町村が指定・監督を行う地域密着型介護サービス(夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護[グループホーム]等9つ)と居宅介護支援がある。予防給付サービスでは、都道府県など指定・監督において介護予防サービス(訪問、通所、短期入所)、市町村の指定・監督では、地域密着型介護予防サービス、介護予防支援がある。その他、居宅介護(介護予防)住宅改修、介護予防・日常生活支援総合事業がある。介護サービス費の9割分(一定以上所得者は8割または7割)は保険給付され、要介護者は、原則として費用の1割分(一定以上所得者は2割または3割)のほか、施設サービスを利用した場合の食費および居住費を負担する。制度改正は、3年ごとに7期までの改正がなされ、7期では地域包括ケアシステムの強化のため自立支援と要介護状態の重度化防止のための医療・介護の連携推進、地域共生社会実現への取り組みと制度の持続可能性確保には、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とし、介護納付金への総報酬割の導入に伴い必要な方に必要なサービスが提供されるよう改正された。
(加藤友野)