勘定返報について、フランス民事訴訟法(1806年)に詳細な定めがあり、明治政府の翻訳局の訳述をもとに(用語を現代語化して)その要点を示せば、①会計責任を負う者による計算書の提出、②計算書には実際の受取高と支払高および末尾に差引残高を記載、③計算書の差引残高の(勘定返報を提訴した者への)支払い、となる。訴訟では裁判所が証人になるので必要ないようだが、一般(訴訟外)の勘定返報では残高支払(清算)の後に、責任解除の証として勘定受領証の授受が行われる。会計責任は責任解除をもって終わる。会計責任に直結する会計は、計算書を作成するために、会計帳簿の作成と、会計責任の開始時点の状況次第で(たとえば財産管理の受任)、開始財産目録の確認または作成が必要である。会計帳簿と財産目録は会計の原点であり、勘定返報(顚末報告)は会計の原型である。この会計の原点と原型が、公益法人認定法令が定める公益法人(公益社団・財団法人)の会計にみられる。公益法人は、会計帳簿の作成のほかに、財産目録の備置きが必要であり(公益認定法21②)、毎決算で作成・提出する計算書類として、貸借対照表・損益計算書のほかに、財産目録と(所定の法人につき)キャッシュ・フロー計算書がある(同法21②、22、同法施行規則28①)。キャッシュ・フロー計算書は収支計算書であるから、公益法人の会計報告には勘定返報(顚末報告)が生きている。
(安藤英義)