会計検査院

 国の収入支出の決算、政府関係機関および独立行政法人等の会計、国が補助金や貸付金等の財政的援助を与えている地方公共団体や各種団体等の会計の監査を行う日本の行政機関である。政府関係機関には、行政機関のほか、国会、最高裁判所も含まれる。その設置根拠は、現行憲法第90条の「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」とする規定にある。憲法上に名称が示されている唯一の行政機関であり、これにより他の行政機関に対しての独立性が保たれているとされる。会計検査院は、明治13(1880)年に設置され、大日本帝国憲法第72条に規定されていた。同条文の内容は、現行憲法第90条とその内容はほぼ同じものである。会計検査院の組織は3名の検査官と事務総局からなり、その意思決定は検査官会議における合議により行われる。検査官の任命は国会の同意をえて内閣が行い、天皇が認証する。会計検査院長は、検査官の互選により選ばれ、内閣が任命する。会計検査院が行う「検査」は、英文ではauditであることから、事実上「監査」と同義である。ただし、政府機関の監査主体であることから、民間企業の監査とはその目的は異なる。会計検査の観点としては、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性の5つがあげられ、後者の3つの観点は、いわゆる3E監査(VFM監査)の観点である。会計検査は、書面検査と実地検査の方法により行われ、その報告は検査報告として毎年検査を経た決算とともに内閣に送付され、内閣から国会に提出される。民間企業の監査において用いられる監査基準に相当する基準はないが、会計検査院は会計検査基準(試案)を策定して公表している。
(吉見 宏)