会計基準

 一般に財務会計にかかわる会計処理方法および財務諸表の表示や開示に関するルールを指す。もし外部の利害関係者が存在しないのであれば、内部の利害関係者間でそうしたルールを決定すればよい。外部の利害関係者関係者が承認することにより、そうしたルールを決定することが可能である。すなわち、特定の組織を対象とする会計基準は、その組織のすべての利害関係者が承認することで設定可能である。しかし新たな利害関係者があらわれた場合には、その都度、承認をえる必要がある。また潜在的利害関係者が存在する場合には、事前に承認がえられない可能性が高い。このことは、利害関係者の激しい変化や不特定多数の者を対象とした会計情報の公表の場合には、当事者たる利害関係者間での会計基準の設定が現実的には不可能であることを意味している。加えて同様の会計基準を必要とする組織が多数存在している場合、個々の組織で会計基準を設定することは、社会的には重複するコストがかかっていることになる。そこで、虚偽情報を排除するとともに情報の等質性を確保するために、また社会的コストを削減するために、標準的な内容を一般化して、社会規範としての会計基準が形成される。そして会計基準は、会計にかかわる各当事者に便益を与えているといえる。具体的には、会計情報の作成者は会計基準に基づいて情報を作成し、会計情報の利用者は会計基準に基づいてその情報を理解し、監査人は、会計情報が会計基準に準拠しているか否かを判断する。そしてこうした便益を与えるために、会計基準はその適用前に一般に公表されることが求められる。また会計基準が社会規範として設定されるのは、その内容の標準化による便益がコストを上回っていることに依存しているといえる。こうした制約のなかで、社会規範たる会計基準は、最小限のルール(ミニマム・スタンダード)となる。そのため、その便益やコストを変化させる環境制約の変化に応じて、会計基準の内容等も変化する。日本の非営利法人については、公益認定の有無や活動資金源泉(公的資金または一般的寄附等)の相違、活動内容にかかわる規制の相違等といった環境制約の相違に基づいて、非営利法人の種類ごとに会計基準が設定されている。たとえば、公益認定されている一般社団・財団法人には「公益法人会計基準」、社会福祉法人には「社会福祉法人会計基準」、私学助成法に基づく補助金の交付を受ける学校法人には「学校法人会計基準」の適用が強制されている。ただし共益的組織で公的資金の収受のない非営利法人等の場合には、特定の会計基準が強制されない状況もみられる。なお会計基準に代えて、会計原則という用語が用いられることがある。厳密には会計原則は会計基準の基礎となる会計思考や会計理論であるとして区別すべきとの見解も存在するが、現在では、ほとんど同義で用いられている。
(齋藤真哉)