NPO

 Non-Profit organization(あるいは別名Notfor-profit organization)の頭文字をとった略称で非営利組織と訳される(標記は通常nonprofit organization)。営利を目的として追求しない非営利性において共通する政府組織と区別するため民間非営利組織とも呼ばれる。社会を構成する公式組織を、政府性=非政府性(民間性)と営利性=非営利性の2つの基準で政府、民間営利、民間非営利の3セクターに分けることができるが、NPOは民間非営利セクターを構成する多様な組織群である。NPOを定義するうえで、1990年にジョンズ・ホプキンス大学で開始された「非営利セクター国際比較プロジェクト」で用いられた国際的基準が普及しており、①組織的実在(組織としての実態があること。法人格の有無を問わない)、②非政府性(民間組織である)、③非営利性(利益[剰余金]を構成員に分配しない)、④自己統治(外部から統制されず内部的に自律している)、⑤自発性(構成員としての参入退出が自由で非強制)の5つの要件をすべて満たすものが非営利組織とされる。NPOが営利組織に対して非営利性を強調する表現であるのに対し、NGOは政府に対して非政府性、民間性を強調する呼称であるといえるが、意味するところは同じである。近年、NPOに代えて市民社会組織(CSO:Civil Society Organization)という表現も多く用いられる。
 日本では、明治31(1898)年に施行された民法34に基づく公益法人(社団法人および財団法人)制度を発足させて以来、第2次世界大戦後に民法の特別法として、私学法に基づく学校法人、宗教法人法に基づく宗教法人、社会福祉事業法(昭和26年法律第45号)に基づく社会福祉法人の制度が設けられてきた。その後、1990年代に入り、更生保護事業法に基づく更生保護法人、特活法に基づく特定非営利活動法人の制度も生まれた。これらは非営利=公益の領域に位置する非営利法人である。一方、非営利=非公益の領域は、長らく「法の間隙」ともいわれ、この領域に属する非営利団体(同窓会、同業者団体など会員の共益を図る会員制組織が多い)は法人格取得の道が閉ざされていたところ、中間法人法(平成13年法律第49号)により法の間隙が充塡された。2000年代に入り公益法人制度改革が行われ、平成18(2006)年に公益法人制度改革関連三法(一般法人法、公益認定法、整備法)が成立し、民法から旧公益法人の根拠規定が削除され、中間法人法も廃止され、一般社団・財団法人と公益社団・財団法人の制度に移行した。
 以上のほかに制度化されたNPOとしては、自治法260の2(平成3[1991]年改正)に定める認可地縁団体、建物の区分所有等に関する法律(昭和58[1983]年改正)に定める管理組合法人、団地管理組合法人、生協法に定める消費生活協同組合(消費生活協同組合)など多くの個別根拠法に基づく非営利法人や非営利団体が存在する。
(初谷 勇)