一方、企業が発行する各種のポイント制のサービスが拡大している現在、エコマネーの使い勝手や差別化を強調することは難しくなっている。しかし雇用関係ではない支え合いの有償ボランティアのようなエコマネーの仕組みは、安心感を備えもつ近隣コミュニティと通底するシステムとはいえ、市場サービスでは代替しがたいものとしての重要性をもつものといえる。近年では、平成23(2011)年の東日本大震災後、被災地域の事業活動や障害者就労支援に事例がみられる。日本で最初にエコマネーという用語を提唱した加藤敏春は、エコマネーが「信頼貨幣」としてボランティア経済で流通するだけではなく、エココミュニティやエコライフを支えるもので利用価値の媒介手段として定着する可能性をもつと強調している。エコマネーは、資本主義と市場経済の限界を受け止め、新しい社会経済社会へのロマンを提供しているといえる。
(杉岡直人)