運営費交付金(独立行政法人)

 独立行政法人(独立行政法人)は、国の政策実施機能を国から切り離して独立の法人格を与えたものであり、公共性の高い事務・事業のうち、民間の主体にゆだねると実施されないおそれがあるものを行わせるという制度設計になっている。また、業務の質の向上、効率性、自律的な業務運営を確保し、業務の透明性を確保する仕組みとして設計されている。その設計理念から要請される仕組みとして、主務大臣が目標を定めて、業務の有効性・効率性の観点から独立行政法人の業績を評価するという特徴がある。法人の長は、主務大臣が定めた目標の達成状況に対する説明責任を果たすことが求められており、成果を評価するためには、財務情報だけでなく、成果情報が求められているという特徴がある。独法の財務報告には、2つの目的がある。1つは、「法人の長の立場からは説明責任を履行する機能を果たす」(法人の長の説明責任目的)という目的であり、もう1つは、「財務報告利用者の立場から意思決定に資する情報を提供する機能を果たす」(財務報告利用者の意思決定目的)という目的である。この2つの目的は、財務諸表の体系において、損益計算書と行政コスト計算書という2つのフロー情報に関係している。独法は、一般的には独立採算制を前提としておらず、政府は所要の財源措置を講ずる必要があり、政府が独法に対して業務運営の財源に充てるために必要な金額を交付することができるとしている(独立行政法人通則法46Ⅰ)。この規定による交付金(運営費交付金)は政府の予算に計上し、国会の議決を経る必要がある。運営費交付金は、「一項一目」で予算計上されることにより、使途の内訳を特定せず、いわば「渡し切りの交付金」として運用されている。従って、各独法の運営上の判断により、当該法人の予算上で見込んでいた使途とは別の使途に充てる場合にも、移流用の承認といった主務大臣の事前の関与はなく、中期計画との異同についても、主務大臣による評価のなかでその当否が事後的に判断されることになる。運営費交付金の支出については、事業等のまとまりごとに予算の見積もりおよび執行実績を公表し、両者が著しく乖離した場合にはその理由を明らかにすることとし、使途の透明性を向上させ、法人が説明責任を負うこととされている。独法は、業務運営にあたり、運営費交付金が税金等の貴重な財源で賄われていることに留意し、中期計画または事業計画に従って、適切かつ効率的な使用が義務づけられている(独立行政法人通則法46Ⅱ)。これにより、独法は、透明性や説明責任を向上させるとともに、業務の執行に関し不要・不適切な支出を防止すべき責務があることが明らかにされている。
(鵜川正樹)