運営費(社会福祉法人)

 福祉サービスの分野において、運営費とは福祉サービスの提供に要する費用として社会福祉各法の定めるところにより行政等の福祉サービスの制度主体から給付される資金をいう。福祉サービスの運営に要する経費は、各種公費財源によって賄われている。運営費という用語は行政予算の科目名称に由来し、行政にとっての費用であることから運営費と呼称される。逆にこの給付資金を受けて福祉サービスを提供する主体(社会福祉法人等)においては、「運営費」とは収益概念となり、「運営費収益」等と呼ばれる。社会福祉事業等に係る運営費としては、介護報酬、障害福祉サービス給付費(障害者介護等給付費・障害者訓練等給付費)、保育委託費、措置費などがある。かつて社会福祉事業は基本的に措置制度によって実施されてきた。しかしながら平成12(2000)年には介護保険制度が創設、また平成15(2003)年からは支援費制度が開始するなど、福祉サービスの多くが利用契約制度に移行した今日、措置制度を含めた多様な運営費に関する公費財源の制度が存在する。運営費を大別するとつぎの2つに分類される。1つは行政の実施責任のもと、福祉サービスの実施を民間の社会福祉施設に委託する委託費としての性格を有するもの(措置費、保育委託費:委託型運営費)である。そしてもう1つは、福祉サービスを利用者の主体的な選択にゆだね、利用者と社会福祉施設との利用契約の関係に置き、行政はその利用した費用を助成するもの(介護報酬、障害者自立支援給付費、認定こども園等の施設型給付費:利用契約型運営費)である。なお利用契約型運営費の対象となる福祉サービスであっても、利用者が適切に利用制度に到達できないようなやむをえない事由がある場合には、行政庁が職権によって福祉サービスに繋げる措置を行う旨の規定がある。 委託型運営費については、その委託業務内容の適正を期すために、委託費を構成する費目に応じて資金の使途制限が設けられ、施設運営の自由裁量性が制限されるという特徴がある。利用契約型運営費については、行政から交付される資金は、根拠法上、利用者に対して利用に要した費用を助成するという法律構成となっていることから、行政から施設に対する資金使途制限を課する法的根拠がなくなった。このため、利用契約型運営費に基づく施設運営については、基本的に大幅な自由裁量性が認められるようになった。ただし利用契約型運営費であっても、その実施主体である社会福祉法人についての資金運用規制(たとえば、法人外への資金の流出の禁止等)は、いぜん存在する点には留意が必要である。
(千葉正展)