陰徳

 『淮南子』の人間訓にある「陰徳有る者は、必ず陽報有り」から、善行を誇示しない価値観をいう。非営利の文脈では、寄付やボランティア等の善行を行うときに、それを社会に公言しないということが倫理的な美徳であるという意味で「陰徳」という用語が使用される。個人とりわけ有名人に対しても、「陰徳」は美徳とされ、そうではない寄付やボランティアについては「売名行為」であるという批判が現在でも起こりやすい。また、企業フィランソロピーにおいて、寄付活動が宣伝行為と受け止められかねないことから、バブル期において日本の企業に「陰徳」を求める風潮がマスメディアを中心に盛んに行われた。近年では、説明責任を果たす重要性から、寄付については、逆に積極的な情報公開を求める動きがある。
(出口正之)