なお、法人類型として特別医療法人が存在していた。特別医療法人とは、開設する医療施設の業務に支障のない範囲で、その収益を医療施設の経営に充てることを目的として、厚生労働大臣の定める収益事業を行うことができるものとして創設された制度であるが、従来公立病院等が担っていた医療を民間の医療法人が積極的に担うよう推進することを目的とした社会医療法人制度の創設に併せて、新規認可は行われず、平成26(2014)年に廃止された。また、社会医療法人は、「救急医療等確保事業の実施に資するため」社会医療法人債を発行することができる(同法54の2)。社会医療法人債は金融商品取引法2に規定する有価証券に該当する。発行にあたっては、都道府県知事の許可は不要であるが、医療法で準用する会社法の規定などに基づいて実施することや、刑罰規定も設けられている(同法77など)。
表は、おもな医療法人制度の改正に係る変遷を記載する。
(上村知宏)
改正 | 医療法人制度に係るおもな改正 |
医療法改正(1950年) | 医療法人制度の創設 |
第1次医療法改正(1985年) | 1人医師医療法人制度の創設(診療所への対応) |
第2次医療法改正(1992年) | 医療法人の附帯業務に疾病予防運動施設等を追加 |
第3次医療法改正(1997年) | 特別医療法人制度の創設 附帯業務の拡大(第2種社会福祉事業にまで拡大) |
第5次医療法改正(2006年) | 社会医療法人制度の創設 医療法人制度の見直し(新規創設医療法人について持分なしのみに限定、解散時の残余財産の帰属先の制限、役員・社員総会等の法人内部の管理体制を明確化、事業報告書等の作成・閲覧に関する規定の整備、自己資本比率による資産要件の廃止、附帯業務の拡大(社会福祉事業の範囲見直しと有料老人ホームの設置) |
第6次医療法改正(2014年) | 認定医療法人制度の創設 |
第7次医療法改正(2015年) | 医療法人制度の見直しと医療法人の経営の透明性の確保(医療法人のガバナンスの強化に関する事項の整備、医療法人の分割等に関する事項の整備、社会医療法人の認定等に関する事項の変更) |
医療法一部改正(2017年) | 持分なし医療法人移行計画認定制度の要件緩和 |
医療法人の類型については、下表のとおり。
持分あり法人 | 出資限度額法人 | 基金拠出型法人 | 特定医療法人 | 社会医療法人 | |
法令等 | 医療法附則 | 医療法附則 厚生労働省告示 | 医療法施行規則30の37、同30の38など | 租特法67の2 | 医療法42の2 |
概要 | 持分の定めのある社団医療法人であって、社員の退社時や残余財産の分配にあたりその払込出資額を限度とすることを明らかにした法人 | 持分の定めのない社団医療法人が、法人活動の原資となる資金調達手段として基金制度を採用した法人 |
財団ないし持分の定めのない社団医療法人であって、その事業が医療の普及と向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に著しく寄与し、かつ公的に運営される法人 |
医療の非営利性を保ったまま、経営の透明化と効率化を図ったうえで、医療計画へ参画させ、自立的に公共性の高い医療を安定的な提供を実施する法人 |