医療法

 医療施設の基準をはじめ医療提供体制の基本的な枠組みを定める法律である。戦後、医療機関の量的整備が急務とされるなか、医療水準の確保を図るための施設基準等の整備をするため、医師法(昭和23年法律第201号)、歯科医師法(昭和23年法律第202号)等の資格法とともに昭和23(1948)年に制定された。医療法は、医療を受ける者の利益の保護および良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、それによって国民の健康の保持に寄与することを目的としており(医療法1)、医療を受ける者が医療に関する適切な選択をすることを支援するのに必要な事項、医療の安全の確保のために必要な事項、病院、診療所および助産所の開設・管理に関し必要な事項、これらの施設の整備ならびに医療提供施設相互間の機能の分担と業務の連携を推進するために必要な事項、医療法人に関する事項等を定めており、全9章(第1章:総則、第2章:医療に関する選択の支援等、第3章:医療安全の確保、第4章:病院、診療所及び助産所、第5章:医療提供体制の確保、第6章:医療法人、第7章地域医療連携推進法人、第8章:雑則、第9章:罰則)と附則で構成されている。
 医療法のおもな改正経緯としては、まず法制定の2年後である昭和25(1950)年に医療法人制度の創設があげられる。その後、大きな改正はしばらく行われなかったが、昭和55(1980)年の富士見産婦人科事件をきっかけに「医療の荒廃」に対する批判が高まり、昭和60(1985)年にいわゆる第1次改正が行われた。ここでは国民に適正な医療をあまねく確保する観点から、病院、診療所のあり方を含めた医療制度に係る根本的な見通しの第一歩として、医療資源の地域的偏在の解消、医療施設相互の機能連係の確保等を目的とする都道府県における医療計画制度の導入、医療法人に対する指導監督規定の整備等を行い、また、診療所を開設する医療法人については、制度導入当初は、医師、歯科医師が常時3人以上勤務していることが要件とされていたが、本改正により、いわゆる一人医師医療法人が認められることになった。 その後の経緯は、平成4(1992)年第2次改正(医療提供の理念規定の整備、特定機能病院・療養型病床群の制度化、医療施設機能の体系化、医療法人に関する規定の整備等)、平成9(1997)年第3次改正(介護体制の整備、患者の立場に立った情報提供体制、医療機関の役割分担の明確化と連携促進、地域医療支援病院制度の創設、特別医療法人制度の創設等)、平成12(2000)年第4次改正(入院医療提供体制の整備、療養病床・一般病床の区分化、臨床研修の必修化、医療情報提供の推進[広告規制緩和])、平成18(2006)年第5次改正(医療計画制度見直し等を通じた医療機能の分化・地域医療の連携体制の構築、地域や診療科による医師不足問題対応)、平成26(2014)年第6次改正(病床機能報告制度と地域医療構想の策定等による病床機能分化・連携促進、医療事故調査の仕組み等の整備、臨床研究の推進、社会医療法人制度創設)、平成27(2015)年第7次改正(地域医療連携推進法人制度の創設、医療法人の経営の透明性の確保・ガバナンスの強化等の医療法人制度の見直し等)、そして平成29(2017)年に第8次改正(特定機能病院のガバナンス改革に関する規定の創設、持分なし医療法人への移行計画認定制度の延長および要件緩和、検体検査の品質・精度管理に関する規定の創設、医療機関に関する広告規制の強化)が行われている。
 さらに、平成30(2018)年の「医療法及び医師法の一部を改正する法律」(平成30年法律第79号)では、長年課題として認識されていた地域間の医師偏在の解消等を通じ、地域における医療提供体制を確保するため、偏在是正による医師確保対策や「外来医療に係る医療提供体制の確保に関する事項」を都道府県の医療計画のなかに策定することが義務づけられた。
(李 庸吉)