医療区分

 療養病床の診療報酬算定のために患者を分類する2つの区分のうちの1つが医療区分であり、長期入院の必要な患者の医療の必要性の程度の評価に用いる。長期療養患者を入院させるための療養病床は、平成13(2001)年にそれまで「その他の病床」として区分されていた病床を、医療必要度の高い患者の短期間での治療を目的とする一般病床と区別することで設定された。長期療養を要する患者が対象ではあるが、医療保険の適用を受ける。医療機関から患者に提供された医療行為の価格は診療報酬と呼ばれ、国による公定価格である。診療報酬の支払いは提供された個々の医療サービスの診療報酬を合算して支払われる出来高払い方式が原則とされている。しかし、療養病床においては、平成18(2006)年より、患者を分類し、どのような医療サービスを提供されるかにかかわらず、患者分類ごとに設定された定額の診療報酬が支払われる包括支払い方式が採用されている。包括支払い方式の診療報酬を設定するにあたり、患者の状態やかかる費用を勘案して患者のグループ分けを行う。そして、療養病床の長期療養者という患者特性から、医療の必要度と費用、および介護の必要度と費用という2つの区分をマトリクス化することで患者を分類している。この2つの区分のうち、医療の必要度の基準の部分を医療区分と呼ぶ。一方、介護の必要度の基準の部分については、ADL(Activities of Daily Living;日常生活動作)区分によって行われ、患者の移動や衛生、食事や会話等の動作に応じた支援レベルによって区分される。医療区分は、具体的には病名や病態、必要な医療的処置に応じて区分1から3に分けられ、区分3の医療必要度がもっとも高い。医療保険適用の療養病床における診療報酬算定にあたり、介護保険適用型の療養病床との役割分担を明確化するとの方針があったため、医療必要度の高い患者分類ほど診療報酬点数が高くなるよう設定されている。区分2・3に該当する患者の入院割合を増やそうとの方針である。医療区分は疾患・状態と医療処置に応じて設定されている。一例をあげれば、医療区分3は、疾患としてスモン、状態として医師および看護師による常時監視・管理を実施している状態、医療処置として、24時間持続点滴や人工呼吸器使用等といった形で具体的に規定されている。医療区分2は、疾患・状態として筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、脱水かつ発熱を伴う状態、せん妄等が、実施される医療処置として透析、発熱または嘔吐を伴う場合の経腸栄養、喀痰吸引、気管切開と気管内挿管のケア等が該当している。なお、医療区分1は状態や処置の詳細ではなく、医療区分2・3に該当しない者と規定されている。
(山下智佳)