委任

 当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、効力が生じる契約であり(民法643)、民法の典型契約の1つである。委託する内容が、法律行為ではない事務の委託の場合も、委任に関する規定が準用されるので(同法656)、契約締結など法的効力を生じさせることにかぎらず、事務処理を他人に委託する場合も、委任に関する民法の規定に従って委任者と受任者間の法律関係が規律される。委任は、法律行為や事務処理という受任者の行う任務の遂行自体が契約目的であり、請負と異なり仕事の完成(同法632)など結果の実現は契約目的とはなっていない。また、受任者の能力や識見等に信頼をおいてある行為を任せるものであるので、受任者には委任事務の処理において裁量が認められる。しかし、受任者は委任者の信頼に基づいて法律行為や事務処理を行うので、善良なる管理者の注意をもってその事務処理等を行う義務(善管注意義務)がある(同法644)。非営利法人の理事等の役員と法人との関係も準委任の関係と解されており、役員は法人に対し善管注意義務を負い、たとえば役員と法人の利益相反事項について役員として業務を行った場合、その行為が無効とされたり、法人に生じた損害の賠償責任を負うことがある。委任は、特約がないかぎり、受任者が報酬を請求することができないが(同法648①)、事務処理に要した費用の償還等を請求できる(同法650)。委任は、相手方に不利な時期や受任者の利益をも目的とした委任の場合を除き、当事者がいつでも将来に向けて解除をすること(解約)ができ(同法651)、やむをえない事情があれば相手方に不利益な時期等であっても自由に解約できる(同法651②但書き)。委任は、当事者の死亡・破産手続開始決定、受任者の後見開始審判により終了することとされている(同法653)。
(齋藤雅弘)