医師臨床研修制度

 昭和21(1946)年に国民医療法施行令(昭和17年勅令第695号)の一部改正により創設された実地修練制度(いわゆるインターン制度)が起源である。昭和23(1948)年の医師法制定により、同法に基づく規定となる。内容としては、大学医学部卒業後、医師国家試験受験資格をえるための義務として、卒後1年以上の診療および公衆に関する実地修練を行うこととされた。その後、昭和42(1967)年に実地修練制度が廃止となり、臨床研修制度が創設された。当時は、医師免許取得後も2年以上の臨床研修を行うように努めるものとする努力規定としての位置づけであった。昭和53(1978)年のプライマリケアを含む臨床研修の実施、昭和55(1980)年の内科系、外科系、救急診療部門のうち2つ以上の診療科を研修するローテート方式の導入、昭和60(1985)年の内科系、外科系、小児科、救急診療部門を研修する総合診療方式(スーパーローテート)の導入により、対象範囲を拡充させていった。しかしながら、平成25(2013)年当時、研修医は約13,500人いたが、研修先をみると、7割が大学病院、3割が臨床研修病院で実施されていたほか、研修医の約4割が出身大学関連の単一診療科によるストレート方式による研修を受けていた。一方、幅広い診療能力が身に付けられる総合診療方式による研修を受けていた研修医は少なかった。従って、地域医療との接点が少なく、専門の診療科に偏った研修が行われ、「病気を診るが、人は診ない」と評されていたほか、多くの研修医について、処遇が不十分で、アルバイトをせざるをえず、研修に専念できない状況であった。また、出身大学や医局制度(大学の講座がもつ関連病院)による関連病院での研修が中心で、研修内容や研修成果の評価が十分に行われてこなかった。そこで、平成26(2014)年に新医師臨床研修制度が創設されることとなり、診療に従事する医師は、一定期間以上の臨床研修を受けることが必修となった。内容としては、医師資格取得後の2年間、内科、外科、救急科、小児科、産科、麻酔科、精神科の各診療科と、「地域医療」をローテーションすることを義務づけたものであるが、平成22(2010)年に期間を1年間、診療科を内科、外科、救急科に縮小されている。
(上村知宏)