異種同型化

 社会学的制度理論、新制度理論、制度派組織論といった名称で呼ばれる一連の組織論の動向のなかで核となる概念の1つで、本来それぞれ異なるはずの諸組織が同じような構造や戦略をとるようになることを指す。従来の組織論では、それぞれの組織はその存続や競争優位性の観点からより合理的に判断して行動(組織構造や戦略を選択)すると考えられてきた。しかし、現実には環境の不確実性などがあるために、部分的無知の状態のなかで満足化原理に従って判断するしかない。あるいは組織によっては、そもそも何が合理的であるのかがあいまいであったり、合理性というよりも正当性が重視される場合もある。とりわけ行政組織や非営利組織においては、その目的は経済的な合理性ではないばかりか、しばしば多様な解釈が許容される。環境の不確実性が高い場合や、組織の正当性を獲得することが重要となる場合には、それぞれの組織は判断の拠り所を専門家に求めたり、正当性があると認知されている他組織や一般化している仕組みなどに求めるために、多くの組織が同型化する。制度とは、このように諸組織が判断の拠り所、あるいは参照先とする諸要素やあり方などを指している。法律や行政のスキームなどの具体的な意味での制度も含まれることもあるが、あくまでもそれぞれの組織がその正当性を確保するために参照するものであり、具体的な形で表象されているものとはかぎらない。また、制度化といった場合には、諸組織が参照する制度がより一般化していく過程を指している。制度化がすすむとそれが制度化圧力となり、それぞれの組織の自律的な判断の余地が狭められがちとなる。しかし、制度は組織が参照するものであり、制度を物象化し、それが組織のあり方を決めてしまうという見方は本来の制度理論の意図するものではない。
 DiMaggio, P.J. and Powell, W.W.(ディマジオとパウエル)(1983)は、同型化を強制的(coercive)、模倣的(mimetic)、規範的(normative)の3つに類型化している。法律などによって従わざるをえないものが「強制的」同型化、正当性があるとみなされる先行事例などに従うのが「模倣的」同型化、医師や弁護士などの専門家は専門的知識を有していると信じられているためその助言や指導に従うのが「規範的」同型化である。
(吉田忠彦)