移行認可

 旧民法34の規定により設立された社団法人または財団法人(旧公益法人)が、法人格を維持したまま新制度における通常の一般社団法人または一般財団法人に移行できるようにする制度である。旧公益法人は平成20(2008)年12月1日(施行日)から特例民法法人として存続することとなった(整備法40Ⅰ、42Ⅰ、Ⅱ)。特例民法法人は施行日から5年を経過する日までの期間(移行期間)に行政庁に移行認可を申請することができた(整備法45、115Ⅰ)。ただし移行期間満了後も移行認定を申請しその処分を受けていない法人にかぎり移行認可を申請できた(整備法116Ⅰ)。移行認可を受けた場合には、移行登記をした日から通常の一般社団・財団法人となり、「一般社団法人」、「一般財団法人」の名称を用いなければならないものとされた。移行期間内に移行認定または移行認可を受けなかった特例民法法人は、これらの申請に対する処分がされていない場合を除いて、移行期間の満了日に解散したものとみなされた(整備法46Ⅰ)。移行認可を受けるためには、①定款の変更の案が一般法人法の規定に適合すること、②公益目的財産額が零を超える法人にあっては、公益目的支出計画が適正であり、かつ、当該公益目的支出計画を確実に実施すると見込まれるものであることが要件とされた(整備法117)。このため移行認可を希望する特例民法法人は、公益目的支出計画の対象となる事業を選定し、移行後の法人運営を想定した定款、事業計画書、収支予算書を策定し、これらに基づいて移行認可申請書を作成し、行政庁の審査を受けることとなった。行政庁の審査基準としては、①については「移行認定又は移行認可の申請にあたって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」(平成20年10月10日 内閣府公益認定等委員会)、②については「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)」(平成20年4月 内閣府公益認定等委員会)が公表されている。
 制度施行時の平成20年12月1日における特例民法法人は24,317法人であったが、移行期間の5年間にこのうち11,679法人が移行認可を申請し、9,570法人が通常の一般社団・財団法人に移行した。移行期間満了時点で、行政庁の処分が完了していない移行認可申請(取り下げられたものを除く。)は2,116法人であった(平成26年8月内閣府「平成25年公益法人に関する概況」[移行期間の総括])。その後、平成31(2019)年4月1日時点では11,665法人が通常の一般社団・財団法人に移行しているが、行政庁の処分が完了していない移行認可申請は2法人となっている(令和元年12月内閣府「平成30年公益法人に関する概況及び公益認定等委員会の活動報告」)。
(中村雅浩)