アドボカシー

 語義は「弁護;支持、擁護;推薦、唱道」や「弁護士業」を意味するが、前者の(権利)擁護や唱道等の主体と客体の組み合わせは政府・民間セクターの間でさまざまに想定される。また、主体であるアドボカシー団体(アドボカシー組織)は、単一組織にかぎらず複数組織が連携、連合してアドボカシーグループを構成し展開する場合も少なくない。NPO(NGO)が主体となるアドボカシーは、政府だけでなく民間企業やNPOの政策決定者、メディア、国際機関等にも影響を及ぼすが、特に政府に対するアドボカシーでは、政策決定における市民の関心を代表し、公的な決定に市民参加の機会を広め、政府と市民の間にアカウンタビリティを創出することにより民主的統治に寄与する。NPOの広範なアドボカシー活動には、市民社会において行われるもの(世論を形成し、個人や共同行動を動員し、社会運動へと展開する草の根アドボカシー。「間接アドボカシー」ともいう。)と、政府の公的な制度において行われるもの(立法過程における政策決定者に対するロビー活動や証言活動など。「直接アドボカシー」ともいう。)があり、政治的過程では相互に強化し合うとされている。Crutchfield, L.R.(クラッチフィールド)らは、差し迫った社会問題に対する革新的な解決策を見出し、アイデアを全米あるいは全世界にまで広げることに成功し、重要で持続した成果を生み出し、数10年で大規模な制度的変化(社会変革)をもたらしたNPO(High-Impact Nonprofits)をさまざまな活動分野から12団体選び、並外れた影響力を実現するための6つの原則(組織の外部に向けた4原則と内部に関係する2原則)を導出し、原則の1つめに「政策アドボカシーとサービスを提供する」を掲げた。最良のNPOは、地域サービスと政策アドボカシーを組み合わせ、同時に行うことにより両者の間を埋め、両方の機能を有効に果たしながら、好循環を生み社会への影響力を強めていくとしている。
 一方、NPOが政府の政策策定とサービス提供において補充(代替)や補完(協働)の機能を担うだけでなく、政府に対し対抗(敵対)的な存在としてアドボカシー活動を強めるならば、政府はNPOのアドボカシーを制限し、NPOを管理、統制しようとして両者の間に緊張が高まる。税控除される寄付や政府の資金を受けている団体によるアドボカシー活動に対する規制(政策)の当否については、今日でもさまざまな形で争点化する。政府がNPO政策として適切な税制を構築する必要性と、社会において民主的な市民参加型の制度機構を確立し保持すべき要請の両立が図られる必要がある。
(初谷 勇)