アソシエーション

 一般に、協会、組合、社団、結社などと和訳されている。アメリカの社会学者Maclver,R. M(. マッキーバー)は、社会集団を類型化し、アソシエーションをコミュニティの対概念としている。コミュニティが一定の地域(村、町、地方など)において人々に共通する諸特徴(風習、伝統、言葉遣いなど)により統合された包括的な共同生活の領域であるのに対して、アソシエーションはコミュニティを基礎としてある共同の利害や諸関心を追求し、一定の目的を達成するために形成される社会生活の組織体である。企業、学校、教会、クラブなどが例としてあげられる。さらにいえば、地域を基盤とするコミュニティは、そのなかに数多くのアソシエーションが包含されている複合体であるとされている。一方、ドイツの社会学者Tönnies, F(. テンニース)は、人々の間の相互作用のうち、相互肯定的な関係(援助、救済、給付)によって形成される集団を「結合体」と呼び、「実在的有機的な生命体としての結合体」(=ゲマインシャフトの本質)と「観念的機械的な形成物としての結合体」(=ゲゼルシャフトの概念)に類型化した。ゲマインシャフトは、家族のような、古くから存在する「持続的な真実の共同生活」であり、言語や慣習、信仰などの言葉と結びつけられて用いられる。それゆえ、「生きた有機体」ともいうべき集団である。これに対して、ゲゼルシャフトは、「一時的な外見上の共同生活」であり、「公共生活」や「世間」を意味し、営利や旅行、学術などの言葉と結びつけられて用いられる。それゆえ、「機械的な集合体・人工物」とみなされる。ところで、松尾匡は、社会原理の4類型として、開放社会でありながら疎外を生じる「市場」、閉鎖社会であり疎外をも生じる「位階権力(ヒエラルキー)」、閉鎖社会でありながら共同決定を行う「身内共同体(ゲマインシャフト)」、開放社会であり共同決定を行う「アソシエーション」を提示している。各社会原理とその下で活動を展開する主体との関係を示すと、「市場原理」と「株式会社などの営利事業体」、「位階権力原理」と「行政などの政治機関」、「身内共同体原理」と「町内会などの旧共同体」、「アソシエーション原理」と「NPOや協同組合や労働者自主管理企業などの市民事業体」ということになるが、必ずしも一意的に対応するものではない。さらにいえば、ある主体が「いろいろな根本的社会原理」の影響を受け、変質する(たとえば、NPOが身内共同体原理や位階権力原理に浸食される)ことさえ、実際に見受けられるという。市民事業体がこうした状態に陥らないようにするには、Jacobs, J. B(. ジェイコブズ)のいう「市場の倫理」や、近江商人や石田梅岩の説く「商人道」に示される倫理観をもって課題解決に取り組んでいくことが肝要であるとしている。
(伊佐 淳)