アカウンタビリティ

 一般に説明責任を指すが、元来、アカウンタビリティはラテン語のcomputeからくる適正な会計に関連する財務の概念であり、財務、内部統制、規則順守などのプロセスの正当性と透明性にかかわる事項に限定されて用いられていた。その本質はanswerability(応責)にあり、応責のための報告・説明をするということは人や組織が行った決定ないしは行為について、それを正しくしたか、その結果何をしたか、それはなぜしたのかという点について権限や権力の所持者の問いに答えて報告・説明する義務を負わせる手段ないしは手続きのことである。ただし今日では、責任を負わされるのではなく、自主的に任意に責任を感じて責任を負うことも含めてアカウンタビリティを深化させて理解する。非営利組織では、その目的やミッションは利潤獲得以外の何らかの共益か公益に資することにあり、従って、そのアカウンタビリティは財務と非財務を含む二重のボトムラインに関する内容が求められる。財務のアカウンタビリティはどのように仕事がなされているかに焦点があるが、非財務のアカウンタビリティはどのような仕事がなされたかに焦点があり、ミッション達成の過程とその結果という意味の非財務パフォーマンスが中心となる。また、非営利組織には専有権者が不在であり、受託責任を負うステークホルダー(政府・寄附者・助成財団等の資金提供者、クライアント・保護者等の利用者、ボランティアやコミュニティの協力者)が多様であり、それらが直接・間接に組織の経営に関与するので、アカウンタビリティは多面にわたり、資金提供者への上方アカウンタビリティからサービス利用者への下方アカウンタビリティにまで360度評価によるアカウンタビリティと呼ばれる範囲にまで及ぶ。その場合、それぞれが違った基準で組織の活動と業績を評価するため、アカウンタビリティの要件や方法やその内容が異なる。従って、そこに各ステークホルダーと「交渉され協議されるアカウンタビリティ」、その過程で「組織(経営者)の裁量によるアカウンタビリティ」が組織の側に求められる。さらに、非営利組織は公共財や準公共財のサービス供給に対して社会から信託されて保護・助成を受けていることから「パブリック・アカウンタビリティ」を欠かすことはできない。このように非営利組織ではアカウンタビリティは深化され拡大され、これらの複雑性と特殊性があるために、アカウンタビリティに要する増大するコストを計慮しながら非営利組織のアカウンタビリティの規範と基準を設定してそれを十全にすることは組織(その指導者)にとって相当に困難な課題となる。
(堀田和宏)