アームズ・レングスの原則

 アームズ・レングスは、一般には、当事者間の「独立」した(「対等」な)関係、状態を指す言葉である。その原則とは、もともとは国際的な企業取引のルールである「独立企業原則」を意味していたが、現在では、政府の民間への介入や癒着・腐敗を防ぐために、政府と民間の間で距離を保つ方針を示す用語としても用いられている。さらに公共政策分野のなかで、この原則に独自の意味を付与しているのが、文化政策の分野である。同分野において、アームズ・レングスの原則は、芸術表現・創造活動への過度な政府介入を禁じつつ、資金面での政府からの支援を保証する考え方として理解され、文化支援の普遍的な原理として浸透している。今日では、その考え方に沿って、アーツカウンシル(芸術評議会)など、政府・行政から一定の距離(独立性・政治的中立性)を保った文化支援機関の手で、芸術文化団体に対する支援が行われている。なお、1946年にイギリスのアーツカウンシル初代議長に就いた経済学者Keynes, J.M.( ケインズ)が、芸術家保護の観点からこの原則を提唱したといわれている。
(今井良広)