監事

 非営利組織において、その財産および理事の業務執行を監査するために置かれる機関である。組織の統治(ガバナンス)の責任者としても位置づけられる。営利企業である株式会社では、経営者である取締役の執行を監査する監査役(ないしは監査委員、監査等委員)による監査役監査が行われるが、非営利組織(法人または団体)における監事による監事監査は、これに類比することができる。非営利組織は、その根拠法令によっては監事が必須機関となっていないこともある。しかし、その場合であっても、監査機関として監事が置かれることが通例である。監事は原則として独任制である。監事の会議体である監事会が置かれることもあるが、監査結果である監査報告が多数決で決定されることはない。従って、監事会にその議長を設けたり、常勤監事、指定監事が置かれたりすることもあるが、これらに特別の決定権限はない。民法に基づいて設置される法人の監事の職務としては、①理事の職務の執行の監査と監査報告の作成(一般法人法99Ⅰ)、②理事および使用人、子法人に対する事業の報告の要求、法人または子法人の業務および財産の状況の調査(同法99Ⅱ、Ⅲ)、③理事の不正行為等の理事(会)への報告(同法100)、④理事会への出席と意見陳述(同法101Ⅰ)、⑤社員総会へ提出する議案等の調査と報告(同法102)、⑥理事の行為の差し止め(同法103)等があげられている。各種の非営利組織の監事の職務や要件、監査の対象等は、その根拠法の定めによる。また、日本では一般的な非営利組織の監査基準がないため、組織が加盟する業界団体や監督官庁等がモデルとなる監査基準を策定し、これをもとに各法人・団体が監査基準を設定していることが多い。
(吉見 宏)