財務監査(政府)

 公監査として行われる会計検査院検査において、①合法性監査、②合理性・準拠性監査、③財務諸表監査、④財務関連監査を内容として行われる監査のことである。近年、日本の社会経済は少子高齢化の進行による生産年齢人口(または労働力人口)の減少、これに伴う社会保障費用の急激な増加、労働投入量減少による潜在成長率の伸び悩み、社会資本の老朽化などの多様で困難な課題に直面している。そのため、公費の不正支出だけではなく、政策の必要性・効率性・有効性とその政策の成果(アウトカム)に対する評価、知る権利を基礎とした情報公開やバランスシートによる財政状態の開示など、国民(または納税者)に対するパブリック・アカウンタビリティ(public accountability)履行の観点から国の諸機関に対する監査の必要性が強調されている。日本においては、政府が履行すべきパブリック・アカウンタビリティとして、国民へのサービス提供のプロセスを完結するために、公監査として会計検査院検査が行われている。会計検査院は、①正確性(決算の表示が予算執行等の財務の状況を正確に表現しているか)、②合規性(会計経理が予算、法律、政令等に従って適正に処理されているか)、③経済性(事務・事業の遂行および予算の執行がより少ない費用で実施できないか)、④効率性(同じ費用でより大きな成果をえられないか、あるいは費用との対比で最大限の成果をえているか)、⑤有効性(事務・事業の遂行および予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果をあげているか)などの観点から検査を行っている。会計検査院検査は書面検査と実地検査の2つの方法で常時行われ、財務監査は、①合法性監査、②合規性・準拠性監査、③財務諸表監査、④財務関連監査を行う。なお、会計検査院は、パブリック・アカウンタビリティのさらなる向上を目的として、平成24(2012)年10月に「会計検査基準(試案)」を公表している。試案では「財務諸表に対し合理的な保証を与える会計検査を行うことを前提としたものではなく、不適切又は不合理な会計経理や会計経理と関連する事務・事業の遂行を指摘する検査を前提としている」としている。
(梅田勝利)