FAQ改正、別表Hの解説を追記
本記事は専門誌「公益・一般法人」2022年5月1日号に掲載された『【公益法人NEWS】「FAQ改正、別表Hの解説を追記」』を一般公開するものです。

 3月30日、内閣府公益認定等委員会事務局は「公益法人制度等に関するよくある質問(FAQ)」を追加・修正した。
 追加されたFAQは6つ(問VI-6-1~6)、修正されたFAQ(問VI-4-8、9)は形式的な修正であった。追加された内容は、令和3年6月に別表Hが変更されたことに伴う「定期提出書類の手引き公益法人編」の改訂を補完する内容である。以下に追加項目の全文を掲載する(本紙編集部:後藤沙織)。

公益法人制度等に関するよくある質問(FAQ) / 内閣府公益認定等委員会事務局

追加内容

問VI-6-1(別表H)
別表Hとはどのようなものですか。

1 公益法人は、毎事業年度の経過後3カ月以内に財産目録等を行政庁に提出しなければなりません(認定法第22条第1項)が、その様式第5号による提出書(認定規則第38条第1項第2号)の別紙4中の書類の一つとして、別表Hがあります(定期提出書類の手引き公益法人編)。
 公益法人は、当該事業年度の末日において公益認定が取り消された場合における公益目的取得財産残額に準ずる額を算定する必要があります(同規則第48条第 1 項)が、別表Hはその算定を行うためのものです。別表Hにおいて、公益目的取得財産残額(別表H(1)の24欄)は、公益目的増減差額(同 1 欄)と公益目的保有財産(同21欄)の合計額として表示されます。

2 公益目的取得財産残額(公益認定の取消し等の場合に認定取消法人等が贈与すべき財産に係る額。認定法第30条第 1 項参照)は、当該公益法人が取得したすべての公益目的事業財産から公益目的事業のために費消・譲渡した財産を除くことを基本に算定されます(同条第2項参照)。
 ただし、実際に公益認定の取消し等が行われた時点で、当該法人の公益目的事業財産の取得や費消・譲渡の状況を過去に遡って正確に算定することは、実務上、非常に困難であると考えられます。
 このため認定規則では、毎事業年度、当該事業年度の末日における公益目的取得財産残額を算定し(同規則第48条第1項)、公益認定の取消し等が行われた場合には、直近の事業年度末日における公益目的取得財産残額を基に一定の調整を行うことにより、実際に贈与すべき財産に係る公益目的取得財産残額を確定することとしています(同規則第49条・第50条参照)。

<参考:イメージ図>


問VI-6-2(別表H)
令和3年6月の「定期提出書類の手引き 公益法人編」の改訂は、法令等の改正によるものですか。

1 令和3年6月の「定期提出書類の手引き 公益法人編」の改訂は、法令等の改正に伴うものではなく、別表Hに関し、これまでの「手引き」では必ずしも明らかでなかった点等について、以下の趣旨により、記載を補充・明確化したものです。

2 公益目的事業の財源については、法人全体として当該事業年度の活動財源が充足していたとしても、正味財産増減計算書内訳表上では公益目的事業の財源が不足するような整理としている場合が散見されます。
 このような場合、公益目的事業財産として当初整理されなかった財産(例えば、法人会計の財産)をもって公益目的事業を行っている実態に照らして、当該財産を、会計上は他会計振替により公益目的事業会計に振り替えていない法人においても、公益目的事業財産の増加として捉え、公益目的取得財産残額の適正な算定のために別表Hに記載する必要があることを明記したものです。

3 なお、時価法を適用する金融資産が公益目的保有財産の場合、時価評価損益は、毎事業年度の別表Hに記載せず、公益認定の取消し等の際の最終提出事業年度の別表Hで一括して調整すれば足りるものですが、この「反映させない」方法の場合でも、金融資産の取得時の価額等の記録を保存するなどして適切に計算できるようにしておく必要があることを明記したものです。
 また、法人の選択により、各事業年度の末日時点における別表Hにおいて、時価評価損益
を毎期反映させることも可能としています。


問VI-6-3(別表H)
公益目的事業財産の繰越しがなく、毎期、公益目的事業の収入で公益目的事業を実施する法人において、正味財産増減計算書内訳表の公益目的事業会計の区分が赤字の場合、公益目的増減差額(別表H(1)の1欄)はマイナスとなるのではないでしょうか。

1 別表Hにおいて、公益目的取得財産残額(別表H(1)の24欄)は、公益目的増減差額(同1欄)と公益目的保有財産(同21欄)の合計額として表示されます。
 公益目的事業財産の繰越しがなく、かつ、正味財産増減計算書内訳表の公益目的事業会計がいわゆる赤字であっても、公益目的事業費を計上している法人においては、実態として法人の意思決定により公益目的事業財産以外の財産(例えば、法人会計の財産)をもって公益目的事業に係る経費等に費消していることが考えられます。

2 まず、どのような財産をもって公益目的事業を行っているのかという点について、法人の意思決定により公益目的事業財産以外の財産を公益目的事業に使用・処分した場合、当該財産も公益目的事業財産となります(認定規則第26条第8号参照)。
 その結果、正味財産増減計算書内訳表に他会計振替等による公益目的事業会計の財産の増加が見られない場合には、別表H(1)では財産増加側の追加記載が必要となります(認定規則第48条第3項第1号ル)。
 すなわち、別表H(1)の15欄において単に公益目的事業費を記載するだけでなく、公益目的事業財産以外の財産をもって公益目的事業に係る経費等を使用・処分した場合の当該相当額については、公益目的事業財産の増加として13欄に記載することとなります。
 この結果、公益目的事業財産の繰越しがなく公益目的事業の収入が不足しても実態として法人の意思決定により公益目的事業財産以外の財産で公益目的事業を行っている場合には、公益目的増減差額(別表H(1)の1欄)はマイナスとはなりません。

3 上記のように、別表H(1)の13欄に、公益目的事業財産の増加として相当額を算入することなく、公益目的増減差額がマイナスとなっている状態を継続している法人においては、適正な残高(公益目的増減差額)とするため、過年度の未算入分も含めた修正を行う必要があります。


問VI-6-4(別表H)
収支相償(別表A)上の「収入-費用」が零以下の場合、特段問題としないにもかかわらず、公益目的増減差額(別表H(1)の1欄)がマイナスの場合に追加的な整理が必要となるのはなぜですか。

1 別表Aと別表Hは、その目的と計算の対象が異なります。別表Aによる収支相償の計算においては、公益目的事業における経常的な収入と費用とを比較して、収入が費用を上回っていないかについて確認しています。一方、公益目的増減差額(別表H(1)の1欄)は公益目的保有財産を除く公益目的事業財産の収支等の差額としての残高を示しています。
 例えば、特定費用準備資金の当該事業年度の積立てについてみると、別表Aにおいては費用扱いの整理となりますが、別表Hにおいては公益目的事業収入等で受け入れた公益目的事業財産の残りとして公益目的増減差額を構成します。

2 したがって、正味財産増減計算書内訳表の公益目的事業会計において、例えば、利益相当50が生じた際、それをもって特定費用準備資金に50積み立てる場合、別表Aにおいては「収入-費用」が0となります。一方、別表Hにおいては利益相当50を特定費用準備資金に積み立てたとしても費消していないため、当該金額50は翌事業年度以降の公益目的事業財産の費消等の財源として公益目的増減差額(別表H(1)の1欄)の中に残ることとなります。

3 別表Aの「収入-費用」がマイナスの場合、公益目的事業の実際の財源としては、正味財産増減計算書内訳表の当該事業年度の公益目的事業収入以外の財源により相当額が賄われています。例えば、公益目的事業会計における経常外収益や一般正味財産期首残高、あるいは法人会計の財産等が財源として考えられますが、別表Aにおいては、それらの財源のいずれについても、記載が求められているものではありません。
 一方、別表Hにおいては、当該相当額について、公益目的事業財産の増加(受入)として算入する必要があります。その結果、公益目的増減差額(別表H(1)の1欄)はマイナスとはならないこととなります。


問VI-6-5(別表H)
公益目的事業に係る収入が公益目的事業費を上回り剰余が生じる場合、別表H(1)はどのようになりますか。また、それは別表C(2)(控除対象財産)には影響しますか。

1 公益目的事業に係る収入(例えば、会費収入)が公益目的事業費より大きい場合、正味財産増減計算書内訳表の公益目的事業会計の区分においては、当期一般正味財産増減額が正の値(黒字)となります。いわゆる収支相償の判定における剰余金発生の状態です。(収支相償の判定は、本来は特定費用準備資金の積立額・取崩額を反映させた後の状態で行いますが、ここでは説明の便宜上、会計上の整理に合わせ、特定費用準備資金については反映前の状態で説明します。)

2 別表Aにおける当該年度の剰余金の解消策としては、一般的に次のとおりです。

① 翌期の事業費増加見込みの計画により解消とする
② 資産取得資金や特定費用準備資金を整理することで解消とする
③ 新規の公益目的保有財産を取得したことで解消とする

これらにより剰余金は次のように整理されます。

 まず、1の場合には、別表Aにおいては公益目的事業財産である剰余金を単に繰り越すのみであり、別表H(1)においては 1 欄の公益目的増減差額として繰り越されます(翌事業年度の別表H(1)においては2欄となります。)。
 なお、この場合の剰余金については控除対象財産として整理しないため、別表C(2)には関係しません。
 次に、2の場合には、剰余金を会計上の固定資産である特定資産として繰り越すとともに、別表Aにおいては剰余金以上の資産取得資金や特定費用準備資金の積立てがあれば問題とならず、別表H(1)においては 1 欄の公益目的増減差額として繰り越されます。
 また、別表C(2)においては、控除対象財産として、公益目的事業に係る資産取得資金や特定費用準備資金の期末帳簿価額が存在することとなります。
 さらに、3の場合には、剰余金を会計上の固定資産である特定資産として繰り越すとともに、別表Aにおいては当該事業年度に剰余金以上の公益目的保有財産の取得があれば問題とならず、別表H(1)においては公益目的保有財産の残高である21欄に含まれます。
 また、別表C(2)においては控除対象財産として、剰余金と同額の公益目的保有財産の期末帳簿価額が含まれることとなります。


問VI-6-6(別表H)
別表Hにおいて、公益目的保有財産のうち時価法を適用する金融資産の時価評価損益の取扱いについては、どのように整理されていますか。手引き改訂の趣旨と併せて教えてください。

1 令和 3年6月の「定期提出書類の手引き 公益法人編」の改訂は、法令等の改正に伴うものではなく、別表Hに関し、これまでの「手引き」では必ずしも明らかでなかった点等について、以下の趣旨により、記載を補充・明確化したものです。

2 改訂内容のうち、時価法を適用する金融資産の時価評価損益の扱いについては、時価法を適用する金融資産が公益目的保有財産の場合、時価評価損益は毎事業年度の別表Hに記載せず、公益認定の取消し等の際の最終提出事業年度の別表Hで一括して調整すれば足りるものですが、この「反映させない」方法の場合でも、金融資産の取得時の価額等の記録を保存するなどして適切に計算できるようにしておく必要がある趣旨を明記したものです。
(保存すべき記録としては、金融資産の取得時期、時価、口数等の情報が考えられます。)
※ 公益認定取消し等の際には、公益目的事業財産の残高のうち時価のある公益目的保有財産については、時価評価した価額(時価のないものは適正な帳簿価額)、公益目的保有財産以外の公益目的事業財産については適正な帳簿価額に基づく損益等の増減差額による公益目的増減差額を算定し、最終的に公益目的取得財産残額を確定することとなっています(認定規則第49条・第50条・第50条の 2 参照)。

3 なお、法人の選択により、各事業年度の末日時点における別表Hにおいて、時価評価損益を毎期反映させることも可能としています。この場合、公益認定の取消し等の際の最終提出事業年度の別表Hにおいて一括して調整することは不要となります。
(法人によっては、公益認定の際に公益目的保有財産として保有していた上場株式等の時価が事業年度末日において下落している場合も想定されます。この場合、上記の「反映させる」方法を選択することによって、公益認定の取消し等の際に法人が実態よりも多額の財産を贈与しなければならないという誤解を、予防することにつながります。)

※ 金融資産の時価評価損益を別表Hに「反映させない方法」と「反映させる方法」について、考えられる選択パターンは、次のとおりです。

【すでに別表Hを作成し報告している公益法人】
a)「反映させない方法」を継続する(ただし、時価情報等を整理保存する)
b)任意の事業年度において「反映させる方法」へ変更し、以後は継続する

【今後、別表Hを作成し報告する公益法人】
c)「反映させない方法」を選択し継続する(ただし、時価情報等を整理保存する)
d) 当面「反映させない方法」を選択し、その後任意の事業年度において「反映させる方法」へ変更し、以後は継続する
e)「反映させる方法」を選択し継続する

(編注)問VI-4-89の修正は段落の前に数字を追加したのみであったため割愛した。

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