収支相償に関するFAQ改正ー内閣府新方針 単年度思考からの脱却
出口正之(国立民族学博物館名誉教授)

※本記事はYouTube動画より書き起こしたものです。一部読みやすいように加工してあります。



 こんにちは。出口でございます。
 今回は9月1日に内閣府が「収支相償」に関するFAQを改正いたしましたので、その意味について解説したいと思います。
どのように変わったかと申しますと、「問Ⅴ-2-⑤」と 「問Ⅴ-2-⑥」の前段部分の考え方の部分が変わりました。

問Ⅴ-2-⑤(収支相償)を計算した結果、収入が費用を上回って剰余金が出た場合はどうすればよいのでしょうか。また、この剰余金は遊休財産となるのでしょうか。

1 収支相償の計算においては、公益目的事業に係る収入と公益目的事業に要する費用を比較することになりますが、その際には原則として各事業年度において収支が均衡することが求められます。 1 収支相償の計算においては、公益目的事業に係る収入と公益目的事業に要する費用を比較することになりますが、本基準に基づいて単年度で必ず収支が均衡することまで求めることはしません。

 具体的に「問Ⅴ-2-⑤」では、「収支相償を計算した結果、収入が費用を上回って剰余金が出た場合はどうすればよいのでしょうか? また、この剰余金は遊休財産となるのでしょうか?」という問いに対して、これまでのFAQは「収支相償の計算においては公益目的事業に係る収入と公益目的事業に要する収入を比較することになりますが」と書いてありますが、ここまではガイドラインに沿っています。
これが最初の導入部分で、そこから様々な計算がございますが、ここまではおかしくはありません。

 しかし、その際に「原則として、各事業年度において収支が均衡することが求められます」とあります。
これを見た時に、私は「もうとんでもないことが書いてある!」と思っておりましたが、これは一体何を言っているかといいますと、「原則論として、この収支相償というのは収支均衡である」と言っているわけです。

 これは、法令をそこまで解釈できるかどうか分かりませんが、少なくとも法令解釈として出ているガイドラインからは絶対こういうような読み方はできないようなものになっています。

 なので、これを「本基準に基づいて単年度で必ず収支が均衡することまで求めることはしません」と正しい形に修正したということです。
これだけのことですが、これは実は大変なことだと思います。
内閣府はよく英断をしたのではないかというふうに思っております。

 修正前のFAQで何がおかしいかというと、まず原則論であるということ、それから事業年度に区切っているということです。
それで収支が均衡するでしょうか?
とんでもないことですが、これを今回の改正で全部取り外したということになります。

 また、「問Ⅴ-2-⑤」の部分は上述した通りですが、「問Ⅴ-2-⑥」の部分も全く同じようになっており、その部分が改正されたということでございます。

問Ⅴ-2-⑥(収支相償)収支相償の剰余金解消計画は、必ず翌事業年度で解消するものが必要でしょうか

1 収支相償は、公益目的事業に係る収入と公益目的事業に要する費用を比較することになりますが、原則として、各事業年度において収支が均衡することが求められています。 1 収支相償は、公益目的事業に係る収入と公益目的事業に要する費用を比較することになりますが、本基準に基づいて単年度で必ず収支が均衡することまで求めることはしません。

 では、ガイドラインはどうでしょうか?
ガイドラインですが、このようになっております。

 ② 以下の合計額を費用とする。
  ⅰ 以下の合計額を費用とする。
  ⅱ 公益目的事業に係る特定費用準備金の当期積立て額

 ③ 上記①と②の額を比較する。

⑶ 収益事業等の利益額を50%を超えて繰入れる場合
 ① 収入として以下の合計金額を算出する。
  ⅰ 損益計算上の公益目的事業に係る形状収益
  ⅱ 公益目的事業に係る特定費用準備資金の当期取崩し額(注)
  ⅲ 公益目的保有財産の取得または改良に充てるために保有する資金(認定規則第22条第3項)
     (以下「公益資産取得資金」)の当期取崩し額(注)
  ⅳ 公益目的保有財産の当期売却収入(帳簿価額+売却損益)

  (注)資金積立て時に、収支相償の計算上、費用として算入した額の合計額。

 この「収支相償上の費用」というのは何かと申しますと、公益目的事業の会計に係る経常費用だけではないわけで、それとプラスして特定費用準備資金の当期積立て額というのがございます。
最初にあったように、ここの当該事業に関連付けられた収入と費用を比較するという部分は、そのようなステップを通りますが、原則論として収支均衡だということは一切書かれてありません。

正な費用を償う額を超えない」(認定法第14条にて同旨の規定)(以下「収支相償」)かどうかについては、二段階で判断する。まず第一段階では、公益目的事業単位で事業に特に関連付けられる収入と費用とを比較し、次に第二段階で、第一段階を満たす事業の収入、費用も含め、公益目的事業を経理する会計全体の収入、費用を比較する。
 申請時には、認定法第7条第2項第2号により提出する収支予算書の対象事業年度に係る見込み額を計算し、認定規則第5条第3項(認定法第7条第2項第6号の書類を定めるもの)第3号の「書類」に記載する。認定後においては、認定規則第28条第1項(認定法第21条第2項第4号の書類を定めるもの)第2号の「運営組織及び事業活動の概要及びこれらに関する数値のうち重量なものを記載した書類」に実績値を記載する。

① 第一段階においては、公益性が認められる公益目的事業(公益目的事業のチェックポイントにおける事業の単位と同様の考え方に基づいて、事業の目的や実施の態様等から関連する事業もまとめたものを含む)を単位として、当該事業に関連付けられた収入と費用を比較する。当該事業に関連付けられた収入と費用は、法人の損益計算書(正味財産増減計・・・

 むしろこの費用、つまり当該事業に関連付けられた費用とプラスアルファとして特定費用準備資金の積立て額がありますので、そもそも収支は均衡していないということを前提にこの制度が作られているわけです。

 ところが、2015年の会計研究の報告によりますと「一般に公益目的事業は事業年度を単位として実施されるものであることから費用と収入のバランスを示す〜」と記載されています。

Ⅴ 財務三基準の解釈・適応

1. 収支相償の剰余金解消計画の1年延長

 一般に公益目的事業は、事業年度を単位として実施さえるものであることから、費用と収入のバランスを示す、認定法第14条に規定される「適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない」という収支相償の判断も、事業年度単位で行うことが原則となる。しかしながら、法人側からは、「単年度では偶発的事象により収支相償を満たせない場合があり、複数年度の実績で判定する必要がある」といった意見もあり、検討を行った。
 研究会の検討では、まず、仮に複数年度を対象に適合性を判断するとした場合には、途中粘土で剰余金が発生しても、最終年度が終わるまで様子を見ることになるが、他方では、当該複数年度の終了までに確実に収支相償するようにする(5)ためには、途中段階で対応策の検討等を求めないのは適切とはいえないのではないか、との指摘があった。一方、現在は、剰余金が発生した年度の翌・・・

 その事業年度単位で行うことが原則となると報告で書かれており、これを受けてFAQが改正前のようなものになったということだと思います。
これは読んでいて理解できるかと思いますが、「公益目的事業が事業年度を単位として実施されるものであるというのは一般的」と書いていますが、そのようなことはありません。

 事業年度というのは会計で区切るだけですので、極めてテクニカルに区切るわけです。
事業年度単位で実施されるというのは、役所であればその可能性はございますが、民間では決してそいうことではございません。
これを一般論としてここに書いていること自体がおかしいことです。
 2年サイクルで行っているところもありますし、3年サイクル、あるいはオリンピックのように4年サイクルでやるものもあります。
必ずしも12カ月ということではないケースもあります。
 このようにいろいろなケースがございますので、未収金や未払い金など、多数出てきます。
ですので、事業年度を単位として実施されるということ自体おかしいわけで、このようなことが書かれていること自体がおかしいわけです。

 さらに、「収入費用と収入のバランスを示すその収支相償の判断も事業年度単位で行うことが原則となる」というような考え方もガイドラインにはございませんでした。
こういう形を原則論として、収支相償が年度単位でチェックする、監督上チェックするということは、年度単位でもちろんすると思いますが、そのバランスが年度単位で行われなければならないというのはこの時初めて出てきたものでございます。

 こうしたものを、今回、内閣府の方がFAQの冒頭を変更することによって明確に元に戻したということです。
そういう点で内閣府の今回のFAQの変更は、非常に大きな英断であったのではないかな? というふうに思うわけであります。

 とりあえず、私のほうで解説をさせて頂きました。
 ご清聴ありがとうございます。

出口 正之 先生

解説者
出口 正之
内閣府公益認定等委員会元委員
(公財)助成財団センター 代表理事・理事長
(公社)非営利法人研究学会 理事
専門誌「公益・一般法人」編集委員長
国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授

政府税制調査会特別委員、非営利法人課税ワーキング・グループ委員、内閣府公益認定等委員会常勤委員などを歴任。
主な著書に『公益認定の判断基準と実務』(全国公益法人協会)、『初めての国際学会』(日本評論社)、『フィランソロピー 企業と人の社会貢献』(丸善)など。

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